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『「擬音語・擬態語」使い分け帳』 の序文
山口仲美 |
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はじめに
ステキな人に会えると思うと、私たちは「わくわく」したり、「どきどき」したりします。「わくわく」と「どきどき」は、似ているのですが、微妙に違っています。一体どんな違いがあるのでしょうか?
また、「どきどきはらはらしながら読める楽しい本」とも言います。「どきどき」と「はらはら」は、一緒に使われます。でも、「どきどき」と「はらはら」は、やっぱり違っています。どんな違いがあるのでしょうか? こんなふうに、似ている言葉の微妙な意味の違いを皆さんとともに考えてみようというのが、この本です。
まず、一ページ目に似ている擬音語・擬態語の例を具体的な場面を設定して皆さんに問いかけます。二ページ目は、その違いを解いた解答ページになっています。つまり、二ページで一単位になった擬音語・擬態語練習帳と思っていただけばよいわけです。
なぜ、擬音語・擬態語に限ったかと言いますと、言語感覚を磨くのには擬音語・擬態語が最適な言葉だからです。擬音語・擬態語は、普通の言葉と違って、発音が意味に直結しています。「どきどき」という発音そのものが、心臓の鼓動を写しています。「はらはら」も、どうなることかと気をもみ、冷や汗や汗を滴り落とす様子をいかにもそれらしく写しとっています。つまり、発音がそのまま意味になっている。こういう語群で意味の違いを考えるということは、日本語の音と意味に対する感性を磨くのに最適なのです。それは、言葉を的確に使っていくのに役立つ言語感覚を育てます。
全体は、五章から構成されています。第一章は「美味しさを表す擬音語・擬態語」の違いを考えていただく章です。「あっさり」味と「さっぱり」味の違いをはじめとする、食べものにまつわる言葉の違いをあつかっています。第二章は「人の感情・人間関係を表す擬音語・擬態語」の章です。「いらいら」と「むかむか」はどう違うのかなどを考える章です。第三章は「人の行動を表す擬音語・擬態語」です。「あたふた」と「おたおた」の違いなどを扱っています。第四章は「物の様子や音を表す擬音語・擬態語」。「うじゃうじゃ」と「うようよ」はどう違うかなどを考えます。第五章は「短歌と俳句に登場する擬音語・擬態語」。短歌や俳句を詠まれる方には必読の章です。擬音語・擬態語を使った短歌や俳句をとりあげ、該当箇所は空欄にしてあります。最も適切と思われる語を選択肢から選んでいただきます。果たして、作者と同じ擬音語・擬態語を選んだでしょうか?
どうかお好きなところからチャレンジし、ぜひともこの本で言語感覚を磨いてください。
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