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「みんなゴールキーパーだった」
―会話術の極意―
山口仲美 |
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トキオのやってるテレビ番組「メントレG」が気に入っている。トキオは、正式には「TOKIO」と書くロック・バンド。五人のメンバーからなるが、歌謡のみならず、五人でバラエティ番組の司会・進行もつとめている。「メントレG」も、その一つ。ゲストを囲むトークは、逸品。
特に、彼らが張り切るのは、ゲストが若い女性の時。三十代前半から後半にさしかかった彼らは、程よいオッサンぶりを発揮して若い女性からいろんな話を引き出していく。その日のゲストは、今をときめく青春スターの石原さとみさん。一九歳なのだ。石原さんの当意即妙の返答に喜んで、トキオのメンバーの乗りは最高。
「四年間もサッカーのゴールキーパーに恋をしてて。それから、ゴールキーパーが好き」と言う石原さんに、トキオのメンバーはすかさず「おれたちも、みんなゴールキーパーだったよ」「チョーゴールキーパーだって言われていたんだ」と次々に名乗りを上げる。また、石原さんが恋愛の対象年齢は一回り上までと言うと、「ぎりぎりだ」「あぶねぇ」などと嘘を交えて一斉に名乗りを上げる。メンバー全員がゲストに好意を持っていることを伝えて、話し易い雰囲気作りをしている。
ゲストが、芸の上で苦労した話をすると、トキオのメンバーは芸の上でこけてしまった話を出して、ゲストを引き立てる。
これらは、相手からいい話を引き出し、視聴者を楽しませる会話術の極意。
(日経新聞夕刊毎週火曜日に「日本語チェック」として、こうした言葉のエッセイを掲載しています。この記事は、2006年10月24日掲載のものです。)
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