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『新・にほんご紀行』ってどんな本?
山口仲美 |
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平成20年3月、日経BP社より発売されたフクスケが表紙のこの本は、以下に述べるような三部構成になっています。
テレビの言葉
T部は、「日本経済新聞」に「にほんごチェック」として、毎週火曜日に連載していた「テレビの言葉」のコラムを集めたもの。連載は、二〇〇六年一〇月から二〇〇七年九月までの一年間にわたっていました。もともとテレビをよく見る人間ではありましたが、その期間、私は信じられないほど良くテレビを見ました。これが、結構楽しいんですね。普段は見ないような子供番組から、BSハイビジョンの特集番組のような高度なものまで、実に幅広くテレビ番組を観察する機会が与えられたのです。テレビをつけると、何か取り上げられる言葉はないかと目的意識をもってテレビを見たことなんてないんですから、実に新鮮。私は、わくわくしてテレビを見続けていました。
でも、何本見ても、全くターゲットが見つからないこともありました。たとえば、お昼のメロドラマ。大好きなので、何か言葉を取り上げようと最後まで見続けて、結局見つけられなかったり。かとおもうと、テレビをつけた瞬間に、「この言葉、とりあげたい」と思うものに出くわしたり。テレビ漬けの一年間は、実にいきいきと充実していました。
取り上げる言葉は、できるだけバラエティに富むようなものになるように工夫しました。今流行の若者言葉から時代劇の言葉まで、あるいは、業界用語や方言といった特殊な言葉、ドラマを象徴する言葉、心を打つ言葉や表現、笑いのネタ言葉、巧みな会話術など、多種多様なものをとりあげ、解説してみました。
オノマトペ
U部は、私の専門のオノマトペ関係のものを集めました。オノマトペって、「コケコッコー」とか「ベリベリ」「つるつる」「にちゃっ」などのいわゆる擬音語・擬態語のことです。気楽に読んでいただき、「あらそうだったの!」と言っていただけそうなものを並べました。
物の名前には、実はオノマトペ出身のものがわんさとある。さて、どんな名前がオノマトペからできているのか?「チントンシャン」とか「ヒャラリヒャラリコ」とかいう楽器の音色はどこからきたのか? 一茶の俳句、萩原朔太郎の詩、幸田文の文章の魅力が、オノマトペからどんなふうに紡ぎだされているのか? 「ちんちんかもかも」「ツルの一声」はどこから生まれてきた表現なのか? 各国で動物の声を写す言葉が違うのはなぜか? ハト・ヒバリ・ウズラ、カエル、シカ・サルの声を写す日本語はどんなものか、など、あまり問題にされてこなかったテーマで書いたオノマトペ関係の文章です。
日本語論
V部は、日本語に関する私の思いを述べた記事を集めました。敬語をどう考えるべきなのか、国際化社会に合った日本語とはどういうものなのか、よい国語辞典とはどういうものなのか、すぐれた本の広告表現とはどんなものか、男と女のコミュニケーションは昔はどうだったのか、それは、現在でも通用するのか、などの問題について、私の考えを述べてみました。ちょっと言い過ぎだったり、過激だったりするかもしれませんが、それがきっかけになって言葉の問題を考えていただけるようになればと思っています。
三部仕立てのこの本で、楽しんでいただけたり、「なるほど」と思っていただけたり、チクリと刺戟を受けたと思っていただけたりすれば、本望です。
収録した文章のもとになったものは、巻末に一覧表にしておきます。加筆修正を加え、初出の文章とは若干異なっているものもあります。
では、みなさん、どうぞお好きなところからパラパラと。
<山口仲美著『新・にほんご紀行』(日経BP社)「まえがき」より>
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